いこの読了本備忘録。

読んだ本の覚え書き、みたいな。キャラクター小説多め。※核心的なネタバレは極力避けてはいますが、苦手な方は予めご注意ください

成巌寺せんねん食堂 おいしい料理と食えないお坊さん

 

2018/10/30読了。

序盤、主人公は成巌寺の兄弟のどちらと恋愛的フラグが立つのかなと思っていたのですが、やはり弟の方でしたか。

兄に対してはアイドルを崇拝するかのようなミーハーぶり。

弟に対しては、読書仲間で、ある意味遠慮なく言い合える(寧ろ悪態を吐くことが多い)仲でしたから、そうだろうなとは予想してはいました。

ただ、途中でその弟くんに結婚を考えている相手(無論それは主人公ではない)がいることが判明し、主人公同様に随分ヤキモキする羽目になりましたが。

 

ただ、読み終わった後に思うことは、この兄弟、只者ではなかった。

特に弟、あんた怖いよ。

執念だよ。

 

本筋は、まもなく東京での職を辞める主人公が、故郷の寺と仲見世の間で勃発した問題の解決に乗り出すという話ですが、これは寂れてしまった町や村をどう盛り返していくか、所謂村おこしにも通じる話で興味深かったですね。

その中で登場人物たちの葛藤と言いますか、心情の変化を見ていくのも面白かった。

 

主人公の家は元々精進料理を提供するお店で(作中に登場するお料理が逐一美味しそうなのは流石作者さまと言ったところか)ただ、料理の才能は主人公の方があるけれども、跡取りとして望まれたのは弟の方で、姉は姉なりに、弟は弟なりに悩みがあり、ずっと心に抱えていたものがあったというのが、こう深いなあと。

そんな主人公の気持ちを、家族より誰より寺の弟くんが理解していたというところがトキメキポイントでもある。

これ、絶対彼女に惚れてるやろと確信した場面でしたね。

 

ただ、前述通り、この弟くん、中々の策士でして。

終盤で明かされる事実に、寧ろストーカー的怖さを覚えるほど。

寺の次男坊なのに、修行先では料理番をしていたこと。

主人公の趣味に合わせて本を用意していたこと(貸し借りをよくしていた)

主人公が家族にすら打ち明けていなかった仕事を辞める件について何故か知っていたこと。

これらの謎が一気に解き明かされてた時、色々な意味で鳥肌ものでした。

ある意味ホラーよりも怖いものを感じました。

怖い、怖いよ弟くん。

あのぞっと感は、忘れがたき感覚でした。

 

まあ、主人公も弟くんも互いに素直になれない体質なので、この先どうなるか分からない感じで終わりましたが、二人らしい展開だったかなとは思います。

一応、寺と仲見世との間での決着はつきましたが、そこから盛り返していくのか、それともやはり寂れていってしまうのか。

未来はどうとでも取れるラストだったので、読者側が好きに想像できる余地があったところもいい読後感というか、余韻でした。

個人的には、弟くんがさっさと主人公のところに婿入りすれば話は早いなと思ってはいますが。

そのための修行だったんだろ、君。