いこの読了本備忘録。

読んだ本の覚え書き、みたいな。キャラクター小説多め。※核心的なネタバレは極力避けてはいますが、苦手な方は予めご注意ください

十八の夏 新装版

 

十八の夏 新装版 (双葉文庫)

十八の夏 新装版 (双葉文庫)

 

2018/08/16読了。
大好きな作家さんである光原百合さんのミステリ短編集。
全4編。
ただのミステリではなくて、恋愛要素が割とがっつり+αで足されているのが魅力。

以下、簡単に各話の所感を。

 

【十八の夏】
表題作。
予備校通いが決定した18歳の青年が主役のミステリ+恋愛。
河川敷で出会った年上の女性との一夏の甘い恋、どころか、とんでもない展開に。
彼女が抱えていたことが分かると、作中での、例えば彼女が主人公からの差し入れを全力で拒否した理由などの伏線が一気に理解できて鳥肌。
恋愛ものからサスペンスへの転換が本当に見事。
そして。
まるで夏の陽炎のように、彼女は最後消えてしまう。
そのことで、彼の日常は守られたけれど、彼の世界は確かに一部色を失ってしまった。
何とも苦しく切ない展開。
暑い夏の空気を肌で実感できる時期に読めてよかった。

 

【ささやかな奇跡】
こちらは男やもめ(子持ち)の恋愛がメインで、どちらかというとミステリが+α要素。
大阪弁が小気味よく、彼のお子さんの太郎ちゃんがとにかく可愛くて生意気で魅力的(褒め言葉)
この太郎ちゃんの言葉が、後のミステリ要素になる。
それがまた大人だからこそミスリードしてしまう展開で、この発想が素晴らしかったです。
子供は素直、これキーワード。
クライマックスはこれまた太郎ちゃんがいい仕事をしてくれて、ニヤニヤできます。
個人的には4作品の中では一番好きな話。

 

【兄貴の純情】
ゴーイングマイウェイで変わり者の兄(劇団員)が恋した相手は実は……というミステリ+恋愛もの。
ミステリとしては割と分かりやすい展開で、主人公である弟と一緒に「兄よ、気付いて」と生温かい目で見守るようになるかと。
そう思っていたところに、不器用で劇団員なのに演技がからきし苦手な兄が見せた懇親の「演技」に泣きポイントが。
あの展開はずるい。
兄の恋愛がどういう最後を迎えるかは予想できますが、それを兄がどう乗り越えるというか、真実を知った際の彼がどういう行動を取るかまでは予測しきらなかったので驚かされました。
頑張ったよ、兄貴。

 

【イノセント・デイズ】
4作品の中では一番がっつりミステリな話。
恋愛要素もありますが、恋愛の毛色もちょっと他作品と違います。
(敢えて言うなら「十八の夏」が近いと言えば近いが……)
青春ものと言った方がいいかもしれない。
家族経営で塾をしている講師(男性)が再会した元教え子の少女は、壮絶な過去を経て大人の女性へと成長していた。
家族を、家族となる予定だった人を亡くして一人になってしまった彼女。
彼女が抱えている「過去」には、もっと恐ろしい謎が隠されていた。
ミステリとして展開が二転三転して歯応えもありますし、明かされる真実がこれまた4作品の中では一番エグい。
これをまだ10代の時に抱えたのであれば、そりゃ彼女の人生も狂う。
タイトルとは正反対の印象を受けます。
イノセントとは。
しかも、真実が明かされた後も止めと言わんばかりの展開が。
バッドエンドを阻止するために、主人公の男性が奮闘します。
その結末は是非読んで体験して欲しいです。
久々に手に汗握りながら読了しました。
後、ぎっくり腰を上手く展開に絡ませていたとも思います。
冒頭からぎっくり腰が発動してるんで、読み出した時は、ほっこり話かと思ったんだ。
全然違いましたけど。
イノセントとは(二回目)

 

以前から読もう読もうと思ったまま、気付けばこんなに時間が経っていました。
いい時期に新装版に巡り会えたご縁に感謝したいです。
様々なテイストの話が楽しめる短編集でした。