いこの読了本備忘録。

読んだ本の覚え書き、みたいな。キャラクター小説多め。

奈良町ひとり陰陽師

 

奈良町ひとり陰陽師 (メディアワークス文庫)

奈良町ひとり陰陽師 (メディアワークス文庫)

 

 

2017/07/05読了。

冒頭に主人公の瞳が緑がかっているとの描写があり、「奈良だしご先祖様は彼だろう」と思っていたら、その後、がっつり名前が出てきて、出てきただけではあきたらず、まさかのご本人様降臨という展開。

ここまで来るのに僅か40ページ強。

申し訳ありませんが、爆笑してしまいました。

まさか、がっつり「彼」が絡んでくるとは思わなかったので。

ご先祖様の作品も好きなファンにはたまらない展開だったと思います。

連れ合いとして、「彼女」も出てきますしね。

これは本当に嬉しい展開でした。

 

ご先祖様が気になる方は、こちらを是非。

こちらはこちらで面白いのですよ。

 

 

本編に戻ろう。

 

奈良にも陰陽師がいる。

但し、今となっては一人きり。

そんな彼はお目付役の猫又や、あやかしが見えてしかも殴れる(!)というか、殴ってでも彼を守ろうとする幼なじみの女性と一緒に、今日もあやかし絡みの問題を解決しているのです。

ご先祖様の知恵と、時々本人の力も借りつつ。

 

京都ものを多数書かれている仲町さんの奈良もの。

やはり京都と違って、作品の中に漂う雰囲気も変わりますね。

これは実際、京都に行った時と奈良に行った時に自分が感じた印象の違いと似ていました。

どちらも都であったという歴史を抱えている点は同じなのですが、京都は洗練された厳しさというか、貴族的な感じが漂うんですよね。

庶民にはちょっと敷居が高い感。

空気がぴりっと硬くて涼しい感じ。

一方奈良は、京都よりも庶民に寄り添っているというか、牧歌的というか、誰でも受け入れてくれるほんわかした雰囲気があるというか。

貶してはいませんよ、念のため。

何だろう、春の穏やかな雰囲気、若葉が似合う場所、ふわっとした空気というか。

うまく伝わらない。

ともかく、「からくさ図書館来客簿」に比べると、実際の奈良のように、よりまったり春の陽だまりの中で読めるという感じでした。

面白さは変わらないのですけど。

 

話も奈良らしい展開が多数。

特に東大寺の「お水とり」の話が一番興味深かったです。

「青衣の女人」という単語は某歌で聞いてはいたのですが、具体的なことを全く知らずにいたので(その歌での創作だと思っていたくらい)その薀蓄が聞けただけでも嬉しいと言いますか。

お水とりを間近で見られたのも羨ましいですし。

奈良に所縁のある神様が登場したり、鹿に纏わる話が登場したり、奈良らしさがあちこちに溢れる魅力的なお話でした。

 

また主人公の実家が和菓子屋ということもあり、美味しそうな和菓子も登場して、読んでいて本当にお腹が空きました。

読む時は、餡子系のお菓子があると、うまく防御できると思います。

「からくさ〜」の時も思いましたが、食べ物も魅力的に描かれますよね。

あやかしものとしての面白さもありますが、植物や食べ物も丁寧に描かれるところが、また素敵なんですよね。

 

キャラクターも幼馴染み組がメインということで、和気藹々といった印象。

友達以上恋人未満な感じで、ニヤニヤもできました。

あやかしたち含めて、嫌なキャラクターがいませんし、完全悪役もいないので、最初から最後までほっこり読めます。

 

「南都〜」とはまた違った雰囲気の庶民的奈良もの、あやかしと和菓子を添えて。

是非ご賞味頂きたい作品です。