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いこの読了本備忘録。

読んだ本の覚え書き、みたいな。キャラクター小説多め。

水沢文具店:あなただけの物語つづります

 

 2017/05/01読了。

ペンとノートを買ってくれた人で希望者はそのノートにオーダーメイドの小説を書いてくれるという変わったサービスをしている無愛想な若い店主が切り盛りする文具店での物語。

メインはこの店主と、彼に書いてもらった物語のおかげで悩みが改善した若い小学校教師(女性)になります。

 

この物語は、店主の書いた物語が依頼した人を完璧に救うというご都合主義な話ではありません。

苦しい現実を抱え、どうしようもなくなって物語に救いを見出したい人たちが、その物語を読んだからといって、すぐに問題が解決する訳では決してありません。

現に、小学校教師の彼女は、その後も延々悩み続けます。

 

あくまで物語はきっかけ。

絶対的存在、神的存在としては描かれていない。

悩む人の背中をそっと押してくれるささやかな存在として物語は描かれていて、そこからどんな答えを見つけてどう行動するかは、物語を受け取ったその人本人に委ねられています。

そこが凄く凄く素敵でした。

「助ける訳ではない。君が勝手に助かるだけ」という意味合いのことを他の作品の某キャラが口にしていましたが、まさにそんな感じでした。

 

何より、問題を抱えていたのは店主も同じで、後半は彼自身が物語を通して答えを出さなければならない展開になります。

果たして過去の呪縛に囚われたままの彼がどんな答えを出し、そんな未来を進んでいこうとするのか、是非実際に読んで確認して欲しいと思います。

 

またラストがよかったんですよ。

今まで彼だけが書いていた物語に、彼女が書いた一文。

そして、その一文に応えるように添えられた彼自身の言葉。

寄り添う二文がいい余韻を残してくれました。

ここも素敵なので、最後まで見届けて欲しい物語だと思います。

決して明るくはない、寧ろ厳しい現実を突きつけられて苦しくなる場面もありますが、それでも最後は心温まるという、最終的には優しい優しい物語でした。