いこの読了本備忘録。

読んだ本の覚え書き、みたいな。キャラクター小説多め。※核心的なネタバレは極力避けてはいますが、苦手な方は予めご注意ください

レジまでの推理:本屋さんの名探偵

 

レジまでの推理: 本屋さんの名探偵 (光文社文庫)

レジまでの推理: 本屋さんの名探偵 (光文社文庫)

 

2018/09/10読了。
以前から気になっていた作品だったので、文庫化嬉しかったです。

 

一癖も二癖もある書店員さんたちによる書店ミステリ。
最初は割と平和的な謎解きだったんですが、段々と悪質さがエスカレートした気がします。
普通に逮捕者出る始末ですし。
読む前は、書店あるあるな問題を解決する系だと思っていたので、これにはいい意味で騙されました。
世の中、色々と物騒である。

 

これまでの話でキャラクターを把握してからの最終話は、特に見物でした。
がらりと変わった雰囲気。
いつも以上にやる気を失った店長さん。
これまでの一連の話全てを伏線にしての壮大な(?)叙述トリック
映像化は無理ですね、これは。
しかも、事件として一番派手であり、時間差なども絡んでミステリとしても謎解きも歯応えがあるという。

 

ミステリとして面白いというのもありますが、通常パートは割とコメディなノリで別の意味でも楽しめました。
ユニークなのは、小説ながら脚注があるという点。
書店や小説稼業に関することに関しての解説なのですが、大体はおふざけな解説という。
真面目な解説もあるにはあるのですが、鵜呑みにできないものも多数。
くすっと笑える箸休めにはぴったりな感じでした。

 

実在の作品も登場して謎解きに関わってくるのも、本好き、書店好きには嬉しい仕様。
書店員さんの仕事を眺めながら、コメディもミステリも楽しめる、いいエンターテインメントでした。

聞こえない君の歌声を、僕だけが知っている。

 

2018/09/12読了。

読んでいて話のジャンルが変化していくのが面白かったです。
最初は「無声少女」を探す謎解き・探索系。
その「無声少女」が歌っていた歌詞を作った少女と出会ってからは、家族の絆を描く泣ける系の話。
そして、いざ「無声少女」と出会えてからは、SF物に。
そして、恋物語になるという。
でも、読み終わってみると、最終的には「家族」の物語だったなと思います。
家族の物語で、究極の選択の物語。

 

中盤のこの家族の絆を描く点は、初読時に「周り道してるな」と蛇足を感じたのですが、これが後々に壮大な伏線になるという。
結果的には丁寧に丁寧に終盤に向けての物語を構築していたのですね。
無駄な話は何もなかった。

 

ネットアイドルSNSの活用など、今の時代のネタを上手く活かしていたのも印象的でした。
動画投稿サイトにはまる心境ってこうなのかなと。

 

でもやはり一番印象的なのは、前述通り、家族との絆。
そして、家族のために「選択」をする勇気と愛。
まさか、こんな話になろうとは、全く予想していませんでした。
もし未来が分かったとして。
その未来が人からしてみれば、決して幸せではなかったとして。
しかも、それを回避する方法があると分かっていて。
でも、そのためには、誰かを犠牲にしなくてはならないとして。
その時、果たして自分はあのキャラのようにその結末を選び取ることができるだろうかと自問してしまいます。
まさしく、究極の選択の先の、究極の家族愛の物語。
泣けました。

 

無声少女が歌うオールひらがなの歌詞も、ラストメッセージの際に活きました。
誰に向けて歌うのか、分かった時の鳥肌感。
幸せいっぱいのラストではないのですが、でも胸一杯になるラストでした。
この感動は、是非実際に読んで体験して欲しいです。

恋する死神と、僕が忘れた夏

 

2018/09/14読了。

「死神」と「忘却」の設定といい、死神の少女と主人公の少年に隠されていた真実といい、細かく練り込まれた話だったと思います。
色々と二重構造になっていて、どんでん返しというか、隠されていた真実に驚かされると言いますか。
文章構成が、過去の話と現在とを交互に進むのが、個人的に少し混乱はしましたが。

 

扱っている内容が人の「死」を扱う以上、どうしても重くなりやすい話ですが、ライトノベル調の雰囲気と、死神の少女のノリの良さで、重くなりすぎずに読めました。
思いの外、さらっと読める。
死神が死と共に「忘却」される人の未練を解消するための手伝いをするという話ですが、その亡くなる方たちが総じて若いので、余計に重くなりがちですし。
(年輩の方も対象にいたのですが、さらっと流されてメインの話としては登場しない)
読者のターゲットが、同年代の10〜20代を想定しているのかなという気はしました。
ライトノベル感が拭えないのは、そのせいもあるかも。

 

前述通り、隠されていた真実が暴かれる度に話が二転三転しますが、特に大きかったのは、死神の少女についてでしょう。
「初めまして」で出会った筈の主人公の少年と過去に何らかの因縁があるのは分かるのですが、そこに隠されていた内容が多くて、とにかくびっくり。
一番多重構造になっていました。
しかも、彼女との最後の仕事を終えてからも明かされる真実が残酷で哀しいという。

 

自分の願いのために終わりのある運命を受け入れ、自分の願いのために彼を巻き込んだ彼女のわがままを受け止めた彼。
そんな彼の物語は、彼女とは別の形で続いていきます。
願わくば、この優しい死神が、この先の困難も乗り越えていけますように。
まあきっと、彼女はそばで「にひひ」と笑ってくれているのでしょうが。

名画の謎 対決篇

 

名画の謎 対決篇 (文春文庫 な 58-7)

名画の謎 対決篇 (文春文庫 な 58-7)

 

2018/09/05読了。
大好きな中野京子先生の「名画の謎」シリーズ4作目。
今回は紹介の仕方が面白かったです。

 

「対決篇」と銘打たれた今回、どれも二枚の絵を比べての解説となっています。
実際にその画家同士がバトルしたとか、描かれた対象がライバル同士だったとか、そういう「対決」ではありません。
中野先生が思う「対決」構造になっているのが面白い。

 

例えば、同じ場所を描いた絵画を二枚の絵画を紹介している場合。
同じ場所なのに、一方は昼、一方は夜、それぞれの雰囲気の違いが作者の作風の違い以外からも際立って伝わってくる。
しかも、その雰囲気の違いに隠された背景を知ると、絵を見る視点がより深く深くなっていくという。

 

例えば、同じく自画像と妻の姿を一枚に描いた二人の画家の話。
お互い美人で裕福な妻を娶ったが、若くして先立たれてしまった点は同じ。
ただ妻を亡くしてからの人生が大きく異なります。
片方は成功者、片方は没落へ(後に成功はするけれど、不孝の連鎖が続く)
どうしてこうなった!

 

という訳で、実際にバトルしていたりライバル関係にあったりとい訳ではないのですが、比較することでそれぞれの作品をより深く味わえる点は、流石中野先生。
しかも様々なパターンの「対決」が用意されているので、読んでいて全く飽きません。
無論、今回も紹介されている絵画は全てカラーで掲載されています。

 

個人的には、表紙にもある「麗しの王妃」の話と「海難の恐怖」の話が印象的でしょうか。
絵が好みというのもあるのですが、悲劇性とメッセージ性が強いというのもあって。
特に後者は中野先生も書いていらっしゃいましたが、某国の海難事故時に真っ先に逃げ出した船長の話を思い出して、余計に印象的でしたし。

 

本編もオススメですが、個人的には解説もオススメ。
「怖い絵展」の裏側についても書かれているので、あの展覧会を見に行った方は、この解説もぜひ熟読を。
スタッフと先生のこだわりが分かりますよ。

ガーデン・オブ・フェアリーテイル 造園家と緑を枯らす少女

 

 

2018/09/01読了。

 

何とも不思議な物語でした。
触れた植物を枯らせてしまう呪いというファンタジー要素を持ってしまった主人公の少女。
出だしで「ああ、これはがっつりファンタジーの話か」と思わせておいて、割と現実的な不幸も彼女を襲う。
たった一人の肉親だった父親との死別に、ストーカー被害。
しかも、父親の死後に自分が結婚させられていたことを知る。
いざはたった一人の肉親だった父親を亡くした後、知らぬ間に結婚していたことを知る。
いざ、その夫の元を訪ねてみるが、出迎えてくれた青年に追い出されそうになる始末。
紆余曲折を経て、何とか居座ることに成功はするが、夫は造園をしながら「妖精絡み」の問題も解決する仕事をしているという。
しかも、何故かストーカー被害まで夫のところまでついてきて……

 

ファンタジー要素と現実世界の要素が交互に襲い掛かってくるので、読んでいて非常に混乱しました。
現代ファンタジーではあるのですが、妖精の問題を解決する術は割とがっつりミステリですし。
夫との話になると、途端に恋愛ものにもなりますし。
だから、自分はどの世界観に立って読むべきなのか、ちょっと戸惑ったと言いますか。
ファンタジーか、ミステリか、恋愛か、どれかにがっつり振れてくれているといいのですが、どれも中途半端というか。
そして、全体的に非常に空気が重い。
妖精というファンシー(?)なネタを扱っている割に、重くて鬱々する感じです。
それがまた味でもあるのですが。

 

しかも、ファンタジーでミステリで恋愛というこの物語の世界観を一気に集約した権化が、この夫という。
終盤に彼の正体について、とんでもない事実が発覚します。
ここから嵐のようにファンタジーでもありミステリでもあり恋愛ものでもあるという振れ幅がより大きくなって、こちらも大いに戸惑うという。
この急展開についていけませんのことよ。
しかもついでに、ある人物(※夫ではない)のえげつなさまで暴露されてしまうので、こちらの精神的ライフポイントはもう残っていない有様。
その事実の暴露は正直いらなかった。
確かに、伏線はあったと思うのですが、夫のことで精一杯なのに、その事実まで受け止める余裕はこちらには残っていなかった。

 

ネタバレを承知で端的にこの話をまとめてしまうと、文字通りの「フェアリーテイル」でした。
おとぎ話という意味ではなく、「妖精の物語」でした。
何故こういうタイトルになったのか、最後まで読めば分かるという仕様は凄いと思います。
ただ、如何せん癖が強い作風な気がするので、好みは割れそうな気がします。
少なくとも、自分はもう一回読み直せる気はしない。

 

あ、呪いのことについて述べ忘れた。
主人公の少女もその身に生まれながら持ってしまった「妖精の呪い」も、今作では重要な要素になります。
最初は依頼人の呪いを解決していたのですが、そのうち、少女自身の、そしてある人物自身の呪いを解く話にもなっていきます。
これがまた、自分たちの呪いを解くとなると、すんなり成功しないのがもどかしい。
この挫折から、終盤の怒涛の展開に読者側は巻き込まれる訳ですので、読む際は心づもりをどうぞよろしく。

縄文人の死生観

 

縄文人の死生観 (角川ソフィア文庫)

縄文人の死生観 (角川ソフィア文庫)

 

2018/08/27読了。
以前から気になっていた本なので、文庫版で手に取れて凄く嬉しいです。
しかも、想定していた以上に良本でした。

 

縄文時代の墓の特徴、発掘された骨に見られる特徴(年齢、特異的な変異など)残されいた遺物(装飾品など)から縄文時代の人たちが「死」についてどう考えていたのか探ろうとした1冊。
年齢に応じて埋葬の仕方を変えていたという点も興味深かったですし、その埋葬の違いからどういうことを「願って」いたのかも見えてきたのは、本当に面白かったです。
骨の変異についても色々解説してくださっているので、解剖学的な意味でも読んでいて楽しい。

 

また「死生観」繋がりということで、縄文時代では恐らく死に直結することも多かったであろう病についても解説してくださっていたのですが、そこにまさか装飾具が関わってくるとは思わず。
しかも妊婦さんの死、出産時の死などは、特別に扱われていたというのも、本当に目から鱗な話でした。
今後、装飾品を身に付けた女性の縄文人を見たら、自分の中での解釈が変わりそうです。

 

まさか骨やお墓や装飾品から、ここまで縄文人のこと、縄文人が考えていたことを掘り下げることができるとは思いませんでした。
これは本当にいい本です。
土偶や土器だけでなく、もっと縄文時代のこと知りたいという方にはオススメですよ。