いこの読了本備忘録。

読んだ本の覚え書き、みたいな。キャラクター小説多め。※ネタバレにはあまり配慮できてませんのでご注意を

憧れの作家は人間じゃありませんでした2

 

憧れの作家は人間じゃありませんでした2 (角川文庫)

憧れの作家は人間じゃありませんでした2 (角川文庫)

 

 

2017/12/02読了。

吸血鬼小説家と彼の熱烈なファンな女性担当者(+人なつこい刑事)が、人ならざるものが関係する事件を解決しつつ、担当者さんが何とか小説を書いてもらおうと奮闘するシリーズ2作目。


1作目が本当に面白かったので、2作目登場本当に嬉しかったです。

前回は事件解決後に何とか短編小説が書けていたのですが、今回はなかなか小説を書いてもらえず。
先生は何故か映画を見て夜更かし(?)はするけれど、原稿が進んだ気配もなく……と思っていたら、最後の最後で以下割愛。
この構成が、巻末の短編と併せて素敵でありました。

 

事件の方は、色々な意味で泣かせる話が印象に残っています。
亡くなった人が子供のところに戻ってくる話も泣けましたし、ある妖怪の恋物語は悲恋になってしまって、こちらも泣けましたし。
この恋物語の方は、某苛つくキャラの発言もあって、女性担当編集者にとっては心にトラウマを負う話に。
このトラウマが最後のドッペルゲンガーの話に繋がってくるという。
この事件の方の構成にも舌を巻きました。
伏線の張り方が絶妙です。

 

自分は平凡で何の取り柄もないと思っている彼女の周りには、いつの間にか仲間が増えてきています。
今回登場した某キャラではないですが、羨ましく思えるほど。
今後もシリーズが続いていくのであれば、こうして仲間が増えていくことがいい未来に繋がってほしいものです。
ほら、あのラスボス的キャラをぎゃふんと言わせるためにも是非。
(今回も最高に腹立たしいキャラでした。
正論を言ってはいるのですが、言い方が逐一癇に障る)

 

担当編集者という前に先生の大ファンである彼女の前ではかっこつけたい先生。
先生の運命の相手が見つかるまで、そばにいようと思う担当者。
この2人の関係性も前回から少し変わった気がします。
個人的には先生の運命の相手が彼女なら(王道でご都合主義だが)大変嬉しいですけど。
そうじゃなくても、それはそれでおいしいですけれど。
是非、運命の相手に出会えるまで、シリーズが続いて欲しいなと願うばかりです。

 

先に書きましたが、巻末には先生の使い魔視点の馴れ初め話も。
今回は彼女の出番が少ないように思えたので、これはそう言う意味でもいい補完話でした。
彼女が如何にして彼の使い魔になったのか。
そして、本編のある場面でどうして彼女がああいう行動を取ったのか。
本編は女性担当者視点なので、違う視点から本編を見られて新鮮でした。
今回も最後まで楽しんで欲しい作品です。

奈良まちはじまり朝ごはん

 

奈良まちはじまり朝ごはん (スターツ出版文庫)

奈良まちはじまり朝ごはん (スターツ出版文庫)

 

 

2017/11/28読了。

出社初日に会社が倒産し無職になってしまった女性が、奈良町で日替わりの「朝ごはん」のみを提供する飲食店の店主と出会い、それが縁でその飲食店で働くことに。
そんな「朝ごはん」屋さんでの出来事を綴った物語。

 

一日の最初に食べる食事は総じて「朝ごはん」であり、温かい物を食べるべきという考え方は素敵だったし、サブキャラクターも素敵だったし(特に常連のお客様の園子ちゃんとか、オネエな和尚の和豆さんとか)出てくる料理のレシピもあったりと魅力的な部分はあったのですが、如何せん問題点の方が目に付きました。

 

まず、主人公が個人的にどうしても好きになれなかった点。
人の悩みや問題に無遠慮にずかずか入り込んできて、大抵失敗というか引っかき回したり余計ややこしくしたりと、主人公にあるまじき行動を取ることが多く、正直読んでいてイライラしました。
それで反省してくれるならよかったのですが、この人は懲りません。
本人もそういう点が問題だと自覚しているのに、喉元過ぎれば何とやら、次の話でまた同じように首を突っ込み同じような失敗を繰り返すという。
全く成長していない……

 

そう、この主人公、作中であまり成長しません。
読み手側を苛つかせるだけ苛つかせて終わるという。
感情移入できる部分がなくて非常に困りました。

 

そして、もう一つの難点は、「幽霊」の扱いについて。
この物語、途中で唐突に「幽霊」が登場します。
折角、飲食店を舞台にご飯で癒される話となっていくのかと思いきや、いきなりファンタジー要素がぶっこまれるという。
異色過ぎて、呆気にとられました。

 

これは別作品でも言ったことがあるのですが、オカルトネタ自体を毛嫌いしてのツッコミではないのです。
幽霊などのオカルト、ファンタジー要素を出すのであれば、世界観統一のために話の最初から登場させるべきで、例えばこの作品なら猫のナムを喋らせる、猫又にするなどの統一性を見せるべきでした。
日常ほっこり話と思いきや、途中でファンタジーを見せられても、違和感しかないのです。

 

最後の話ではなんと火の玉まで登場し、しかも「お盆の奈良にはこういうことも起きるさ」と某キャラに言わせる始末。
何と雑な説得。
それに「幽霊はいない」なんて言ってる人がばっちり幽霊見えてたり。

 

とにかく、ツッコミを入れ出すときりがないくらい、設定がガバガバと言いますか、世界観の統一がされていません。
主人公の性格と併せて、申し訳ないですけど読んでいてイライラしました。

 

折角素敵な題材なのに、勿体ないなあ。
設定をきっちり練ってから書けば、化けたでしょうに。
本当に残念でした。

小説 劇場版 はいからさんが通る 前編 〜紅緒、花の17歳〜

 

 

2017/11/26読了。

 

劇場版「はいからさんが通る」前編を見て、久し振りに「はいからさんが通る」原作を読んだのですが、原作と劇場版では特に少尉=忍さんの性格が違うなと思いまして。

 

原作の少尉は、紅緒さんに最初はあまり好印象を持っていないんですよね。
そして自分が女性に人気があるというのを十分自覚していて、その点に自信すら持っている。
自信を持っているという点では大人であり、ちょっと鼻につく部分でもあり、自分は女性にもてるんだぜイエイ!となっている辺りは子供っぽくもある。
そんな彼が、最初はあまり好印象を持っていなかった紅緒に今まで出会ってきた女性とは違うところ、自分のテクニックが通じないところに次第に興味を持っていき惹かれていく……という感じだと自分は思っています。

 

一方、劇場版の少尉はというと、尺の都合もあるのでしょうが、初手から割と紅緒さんに好意的であり、王子様然としています。
嫌味な部分がないんですよね。
原作のラスト頃の少尉の雰囲気に近い気がします。
多分、こちらの方が現代の女子の好みに合っているのでしょう。

 

で、自分は原作の少尉(嫌味なところもある、子供っぽいところもある少尉)も大好きなんですけど、劇場版見た後だと、どうもあの王子然している少尉も好きだなと思いまして。

 

要は何が言いたいかと言いますと。

 

劇場版の少尉をもう一度しっかり味わいたくなった。

 

ということでノベライズを手に取った次第。
前置きが長い。

 

さて、こちらのノベライズ。
劇場版を本当にそのままノベライズ化してあります。
なので、特に小説のオリジナル要素というのはありません。

 

ただそれ故に弊害もあります。
後半はさておき、前半は台詞と台詞の間を説明的文章で繋いだだけという印象が強く、ノベライズとしてはいいかもしれませんが、小説として読むにしては少々お粗末。
丁寧な心理描写、丁寧な情景描写はあまりありません。
「小説」ではないんですよ。
読み物ならいい、粗筋をただ淡々となぞるだけが目的ならいい。
ただ「小説」として読んだ場合は、幼稚ですらある。
正直、そんな印象でした。

 

ただ少尉の異動が決まった辺りからは、その文章がある程度化けました。
ノベライズから小説寄りになったと言いますか。
特に少尉の心理描写が丁寧になりました。
何故最初からそうやらない! と思うほどに。
多分、書き手が少尉のこと好きなんだろうなと思います。
ノリノリで書いているのが手に取るように分かる。
(で、前半は乗り気でなく、作業として書いた印象が強い)

 

と、ノベライズとして難ありな文章ではありますが、劇場版の内容から逸脱していないので、純粋に劇場版を復習したいというだけなら十分だと思います。
劇場版のカットを使用した挿し絵も用意されています。
気に入った場面があるなら、読んでみてもいいかもしれません。

 

ちなみに、劇場版そのものの話の流れや少尉以外の原作との違いなどについては、この場では割愛します。
個人的には、色々原作のエピソードを合体させて、より女性がうっとりできる話にはなったなとは思っています。
特に酔った紅緒さんを背負って帰るあのシーンとかね、たまらなかったなあ。
後は……ぐふふ、気になる方は劇場へどうぞ。

弁当屋さんのおもてなし 海薫るホッケフライと思い出ソース

 

弁当屋さんのおもてなし 海薫るホッケフライと思い出ソース (角川文庫)

弁当屋さんのおもてなし 海薫るホッケフライと思い出ソース (角川文庫)

 

 2017/11/11読了。

大好きな喜多みどりさんの弁当屋さんシリーズ2作目。

美味しそうな弁当も気になりますが、今回は特に不器用な主人公の恋愛模様にやきもきしたように思います。

 

今回も弁当を通してお客様の悩みを解決していきますが、中でも思い出の中にしかない弁当(もしくは料理)の再現が2話もあります。

これがまたどちらも泣けるんですよね。

20年ぶりに明らかになった想いとかもうね、読んでいるだけで涙が溢れる訳ですよ。

ついその前まではおいしそうな料理の描写に涎を垂らしていたというのに。

 

大人も子供も必死になって隠そうとしていた好き嫌いに関しての話も「あるある」と思えてしまう身近さ。

大人だから何でも食べられると思ったら大間違いだ!

 

また弁当嫌い、深夜の揚げ物に対する批判など、ネガティブ方面から見た弁当の話というのもあって興味深かったです。

深夜に揚げ物を食べるあの背徳感……分かるなあ。

太るし。

 

しかし、前述通り、今回はやはり主人公の恋愛模様が非常に気になりました。

前作より恋愛成分が実際のところ多かったように思います。

主人公が前の辛い恋愛から立ち直れた証左なのでしょうが。

 

気になっていたので、無事に着地するところに着地してくれた時には、非常に安堵しました。

如何せん、この作品は主人公の女性からの視点での話で、弁当屋の彼視点で描かれることがないから、彼の気持ちがよく見えないんですよね。

お蔭で主人公と一緒に随分ヤキモキする羽目になりましたが。

彼も色々過去もちですからね(この点は、やはり今回も詳しくは明らかにならず)

ただ彼の本当の名前が明らかになったのには驚きました。

え、あの名前本名じゃなかったんかい!

彼自身も何か成長したように思える展開ではありました。

 

今回非常に綺麗にまとまっていたので、これでシリーズ終わるのかなとちょっと不安がありつつ。

自分はまだ続きが読みたいので、続編を心待ちにしたいところです。

くま弁の心まであったかくなれるお弁当、まだまだ読みたいというか食べたいです。

北海道は遠いなあ……(行ってもないぞお前)

おいしいベランダ。午後4時の留守番フルーツティー

 

2017/11/18読了。

まさかの彼が再登場で、ベランダ農業カップルに危機をもたらすという。

粗筋からそう察し油断せずに行こうと思って読み進めてみたけれど……案外危機短かった。

想定以上に短くて笑いました。

想像以上といえば、葉二の嫉妬っぷりと余裕のなさもね。

まもりのこと好きすぎだね彼は。

まあ、油断だらけのまもりだから(実際今回の話でナンパされかかる)心配したくなるのも分からんではないけれど。

 

今回はがっつり夏のお話、出てくる料理は相変わらずどれもおいしそうだし、各章のタイトル含めて、漫才のような会話や軽快な文章が非常に面白かったです。

あのテンポのよさは真似できないなあ。

 

危機と言えば、再登場の彼よりも新キャラの彼がもたらした方が危機だった件。

まさかの遠距離恋愛の危機。

しかし、この時の葉二の言葉が非常に印象的でした。

「これだけ悩むということは、今は時期ではない。決まっている時は一瞬も悩みはしない」と(簡単にまとめるとこんな感じ)

仕事とまもりとの日常、どちらを選ぶか悩むに悩んだ彼の言葉、真理をついてるなと思いました。

やっぱり、まもりのこと好きすぎるよな、彼。

 

ちょっとした危機を乗り越えつつ、でも未だほぼ清い交際のお2人。

いや甘い展開はあるにはあるけれど、まだ高校生かよという感じなので。

まだベッドお持ち帰り未遂までですからね(そう、未遂まではいった!)

その点の展開も期待しつつ……あの親の手前、難しいかもしれませんが。

頑張れ男の子。

妻を殺してもバレない確率

 

妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)

妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)

 

 2017/11/21読了。

書店で見かけて、そのタイトルの物騒さが印象に残ったので、つい手に取ってしまった作品。

色々な確率が(それこそ表題にあるような確率までも)携帯アプリで簡単に計算できるようになった日本を舞台とした短編集。

あくまでそういうアプリがあるということ以外は、現代日本と何ら変わらない世界観です。

 

基本的に切なかったり苦しかったり苦かったりする展開を経てからのハッピーエンドな話を収録。

表題作の「妻を殺してもバレない確率」も、望まない政略結婚させられた男性が日々妻を殺してもバレない確率を計算しつつ、それをネタに妻と(本人が意図しないまま)コミュニケーションを図っていく話です。

やっと妻のことを好きになれたと思った矢先に訪れる重い悲劇……その悲劇をどう乗り越えるか。

そして、乗り越えた先の奇跡。

涙なしには見られない展開が待っています。

 

他に失恋系の話という一見ハッピーエンドじゃないじゃないかという話もありますが、こちらは前へ進むための失恋話なので、読後感は決して悪くありません。

また、他の話に出てきたキャラが次の話でメインキャラになっていたりキーマンになっていたり(その逆もある)短編集ながらほんのちょっと繋がりが見えるのもニクイ仕様です。

舞台が広島なので、広島県民にも嬉しい仕様かも。

 

個人的にはラストの「私が一生独身の確率」が一番好きですね。

ここまで確率を謳っておきながら、結局絶望的な確率も奇跡の前には無意味という。

ここまで出てきた確率を絡めながらの大団円、いいラストでした。

王家の裁縫師レリン 春呼ぶ出逢いと糸の花

 

王家の裁縫師レリン 春呼ぶ出逢いと糸の花 (角川ビーンズ文庫)

王家の裁縫師レリン 春呼ぶ出逢いと糸の花 (角川ビーンズ文庫)

 

 

2017/11/24読了。

女学校に通いながら裁縫師になることを夢見る少女の学園ストーリーであり恋愛ストーリーなのだが、前半と後半の落差がいい意味で凄い。

 

前半は前述通りの学園もの。
女学校で多少の身分格差によるトラブルはあるものの、気の置けないクラスメイトたちに囲まれて和気藹々としていたり、少し不思議な転入生と仲良くなったり、彼女の正体を知らされ騒動に巻き込まれてしまったり。
そして密かに生徒達の間で「王子様」と称される騎士さまと親密になって、デートしてみたりして、何とも明るく華やかな雰囲気。

 

ところがどっこい、後半になると、シンデレラも裸足で逃げ出すような展開が待ち受けている。
この落差が凄い。
なまじ前半がきらきらした雰囲気なので、後半の展開は光から一気に闇へ突き落とされたかのような衝撃がある。
急に家から退学を命じられ連れ戻される主人公に待ち受けていたのは、絶望。
外に出ることも許されず、養父たちによる飼い殺し。
ただ裁縫が好きで、夢を叶えたいだけの少女に降りかかる展開としては非常に苦しく重い。

 

そんな彼女を助けるのは、無論「王子様」な騎士さま。
そして女学校で手に入れていた仲間たちも、彼女のために立ち上がってくれた。
そこからの展開は、前半とはまた違った明るさと清々しさがある。
悪は完膚なきまでに滅び、彼女は未来の可能性を自分の力と仲間の協力で手に入れる。
気持ちのいいラストである。

 

恋愛面では、主人公に最初からやたら甘い騎士さまとは昔から縁があるという、ある意味王道で、ある意味意外性はない展開だったけれど、その縁を最後の最後で(忘れていた)主人公本人に騎士さまから伝えるというのは、個人的に意外だった。
大体この手のことは、読者側には知らせるけれど、本人には随分後になってから発覚するとか、しないままであることも多いのだけれど、「おいおい、おまえここで言っちゃうのか!」とツッコミを入れたくなるほど。
まあ、恐らく彼自身が我慢できなかったのでしょう。
後半が辛い展開だったのを忘れさせるような甘い展開がきて、そっちにもびっくり。
恋愛ものとしても気持ちのいいラストである。
気持ちいいを通りすぎて甘すぎるかもしれないが、まあそれはさておき。

 

サブキャラクターも魅力的。
クラスメイトや転入生は勿論のこと、一番気になったのは堅物の黒い騎士さん。
序盤は特にただの物騒な人だったのが、途中で色々キャラが立ちまくったので。
フラグを色々立てたとも言える。
彼と、彼が敬愛し、また彼のことを好ましく思っている某お方とのロマンスも見てみたい気がする。
色々常識はずれな展開にはなりそうだけれど。
主人公カップルよりある意味気になる。