いこの読了本備忘録。

読んだ本の覚え書き、みたいな。キャラクター小説多め。

カスミとオボロ 春宵に鬼は妖しく微笑む

 

カスミとオボロ 春宵に鬼は妖しく微笑む (集英社オレンジ文庫)

カスミとオボロ 春宵に鬼は妖しく微笑む (集英社オレンジ文庫)

 

 

2017/08/08読了。

悪路王を「朧」という名前で縛って使役してしまった伯爵令嬢の香澄(鈴鹿御前の生まれ変わりと言われてる)が遭遇する大正時代を舞台としたあやかし物語。

シリーズ2作目はチャリネ=サーカスで出会った不思議な人物に関わるお話と、香澄の婚約者に関するお話の2本立て。

どちらも「恋」がテーマになります。

 

が、香澄はまだ恋を知りませんから(婚約者の話もあるのに)恋の当事者にはなりません。

周囲のコイバナに、自分は果たしてそんな恋ができるのか、できない気がすると悶々としている感じでした。

朧の方はそういう意味では香澄一筋なんで一貫してるんですけど。

 

前作は割とコミカルなシーンも多かった気もしましたが、今回はテーマがテーマだけに、あまりコメディ部分はなかったように思います。

新キャラクターの「花月」が芝居掛かった言動はしますし、最後の最後で朧と言い争っていた場面はコミカルだった気はしますが、まあそれはさておき。

 

この新キャラクターの「花月」がいいキャラしてまして、朧とは恋愛方面で真逆を言ってるし、より長生きしていて、朧でもそうそう手が出せない相手とあって、この先もシリーズが続くなら、いいライバルキャラになってくれそうな気がします。

また是非朧と舌戦バトルして欲しいところ。

 

一方の朧は、これまた最後の最後で香澄に対するとんでもない計画を暴露しやがりまして驚かされました。

それまでは比較的今回は大人しかったから油断していたところに大胆暴露という。

(これ以前に人命救助という名目で香澄の唇を奪う大胆さはあったけど)

香澄、全力で逃げてと思わず叫びたくなるほど。

 

大正時代の令嬢ですから、自由恋愛は厳しい身の上ではありますが、果たして香澄は自分の望む恋を見つけられるのか。

先に朧が絡め取ってしまうのか。

この2人の恋模様がどうなっていくのか、先も見てみたいです。

花霞紅莉の怪異調書シリーズ 僕の瞳に映る僕

 

花霞紅莉の怪異調書シリーズ 僕の瞳に映る僕 (メディアワークス文庫)
 

 

2017/08/05読了。

暑い夏の読書にぴったりなホラーミステリでした。

最後のどんでん返しからの更なる追い打ちが、ホラーとしてもミステリとしてもやられましたから。

結局そっちかい!といい意味でツッコミ入れたくなりました。

いい裏切りだ!

 

20冊しか存在しない自費出版の本を擬えるように起きた殺人事件。

犯人はすぐに分かるも、動機・目的が分からない。

刑事の花霞は犯人の自宅を捜索するが、そこで「見てしまったもの」とは。

 

最初は目を抉るなんていう猟奇的な殺人事件の様子でしたが、途中から段々とホラー色が強くなります。

さながら受けた呪いの力が強くなっていくように、刑事の花霞は勿論のこと、読み手側をも巻き込んで、恐怖や気味の悪さがじわりじわりと広がっていきます。

読めば読むほど本当に気味が悪くなります。

何度も目を抉ろうとする描写が出てきますが、もうその音(の描写)が耳をついて離れなくなりますから。

くちゅりくちゅり。

苦手な方はご注意を。

 

ホラーとしての恐怖や不気味さを存分に発揮しているというのは勿論、ミステリとしても読める作りになっています。

はっきり言ってしまえば、ミスリードを誘う形になっています。

犯人とされた人物の背後にいたのは誰なのか。

ちゃんと事前に伏線が張られているので、読み手側も推理できるようになっています。

「あれ?」って思ったところは覚えておくと答え合わせ時にニヤリとできますよ。

その真相が明らかになった後、更なる追い打ち的展開が……これは冒頭お話ししたとおり。

ホラー的なオチが待っております。

 

何とも濃厚なホラーミステリ。

最後まで読めば、サブタイトルの意味も分かって、より涼しくなれます。

最後まで油断せずに読んで欲しい作品です。

絶対城先輩の妖怪学講座 九

 

 

2017/08/02読了。

相も変わらず発売日に買っていたのに、楽しみすぎてかえって読めていなかったシリーズ9巻(楽しみは後に取って置く派なもので)

ただ、次の新刊の粗筋見て興奮してしまいまして、もう慌てて読んだ次第です。

くそ、もっと早くに読んでおくべきでした。

9巻にて、ついに、ついに……!!!

 

今回は全編通して「狐」のお話。

神使としての狐ではなく、昔話などに出てくる人を化かして騙す方の狐です。

しかも妖怪学徒VS天才マジシャン(詐欺師でもある)という対決仕様なのが熱い。

手掛かりのなさそうなところから、天才マジシャンの正体に行き着いてしまう絶対城先輩、妖怪学でのフィールドワーク経験が探偵的捜査にこうも活きてくるとは。

恐るべし。

 

しかも今回は、先輩への想いを自覚した礼音が外野にからかわれたり後押ししてもらったりする場面が目立ちました。

そう、不器用な主役2人の恋愛模様も今回の見どころ。

前回の話で大分進みましたし、先輩のデレも増えてきたところにこの展開。

天才マジシャンとの対決も本当に見応え抜群ですが、この2人のもどかしい関係が、ああもう、本当にいいのです。

 

「狐」がテーマなだけに壮絶な化かし合いとなる今回の話、逆に様々なキャラクターが本音をぶつけ合う場面もあり、嘘と本当が交錯する、振り返ってみたらいつも以上に練られた構成だったなあと思います。

あるキャラクターに関しては、9巻になってようやく見えてきたところもありましたし。

ただ、壮大なフラグな気がしてならない。

 

と言いますのも、この後待ち構えているのが、前回から引っ張っている「白澤」

この正体が最後の最後に少しだけ出てきます。

どうやら、先輩と近しい人らしいのですが、某キャラとか某キャラじゃないことを祈らざるにはいられません。

フラグ立てたキャラがいるから余計に怖い。

 

手強そうなボスの存在をちらつかせつつ、本当に見どころ盛り沢山だった9巻。

濃厚さはかなりのものだと思います。

いやあ、新刊発売近くなって読んでよかった。

この状態で新刊発売まで放置プレイされたら、発狂ものだったので。

 

ともかく、主役2人、おめでとうございます!

ようやくここまで来たかと思うと感無量です。

貴重な先輩のデレお姿、ありがとうございました。

いいもん見れました(お腹いっぱい)

ミステリなふたり ア・ラ・カルト

 

 

2017/07/27読了。

久し振りにこのラブラブな夫婦にお会いできて、楽しゅうございました。

「氷の女王」の異名を持つクールな女刑事が、家に帰ると年下夫にメロメロでキャラががらりと変わるというのは、最初のシリーズ読んだ時には度肝を抜かれましたが。

懐かしい話です。

そんな奥さんのことを何だかんだで愛してる(そして積極的な奥さんによく押し倒される)イラストレーター兼主夫の旦那さん、今回も名推理でした。

料理も毎回おいしそうでたまりません。

 

全9話、バリエーション豊富で短編ながらも、どれも謎解きが面白かったですね。

犯人当てもさることながら、「どうしてそういう行為をしたのか」という理由を掘り下げる話が多かったのもいい。

予想していたのと違う展開になるのも多々ありましたし。

解説にあった通り、奥さんのアクションと2人のバカップル夫婦っぷりの描写が減った分、凝ったミステリを読めた気がします。

そうだよな、押し倒されたの1回だけじゃないか……(そこを期待するなよ)

 

奥さんのデレを楽しむもよし、しっかり謎解きにチャレンジするもよし、おいしそうな描写の食事に涎を垂らすのもよしな作品です。

できたら、お酒とおつまみに燻製チーズなんぞあると、より美味しくいただけると思います。

最後はお約束のミスリード系で、わくわくしますぞ。

前回、これで本当にやられましたからねえ。

ちょっと変わった安楽椅子探偵もの、ご賞味あれです。

雨あがりの印刷所

 

雨あがりの印刷所 (メディアワークス文庫)

雨あがりの印刷所 (メディアワークス文庫)

 

 

2017/07/24読了。

以前何回か印刷所さんに本の印刷をお願いしたことがありましたが、なるほど裏側はこうなっていたのかと興味深く拝見。

オフセットとオンデマンドの違いなども、作中で主人公が分かりやすく解説してくれてありがたかったです。

大きな印刷所ではなく、個人の小ぢんまりとした感じのところがまた雰囲気がよかったです。

メインは活版印刷ですしね。

 

印刷会社の仕事で失敗して故郷の岐阜に帰ってきた主人公。

兄の喫茶店で時間を潰す中、彼の元には何故か印刷に関わる話が舞い込んでくる。

自費出版の詩集の再生。

危機的状況の和菓子屋を救うチラシ。

そして、世界でたった一冊の写真集。

それらを作る中、主人公はこれからの自分についても見つけていく……

 

本好きなら誰でも食いつくだろう本の印刷に関わる物語。

しかも印刷所で働く人たちの話ではなく技法の方(昔ながらの方法が登場することが多い)に重きが置かれていて、その点が個人的にはよかったです。

ただのお仕事小説ではないので。

 

また最初の話はさておき、チラシや写真集の話は、起死回生をかけた印刷になったけど、必ずしも現実は上手くいかない(すぐには結果が出ない、間に合ったけど奇跡は起きなかったなど)厳しい現実や挫折といった要素も入っていて、ただのご都合主義な話になっていないのもいい。

そこからの逆転や再生話もあるので、救済もあります。

だから、辛い話でも読後感はいいです。

特に最後の話は、展開が展開だけに泣けますよ。

 

すっかりデジタルばかりになった世の中ですが、活版印刷の温かみや一枚一枚手で刷る印刷物のありがたみが感じられる一冊でした。

昔ながらの印刷もいいものですね。

六道先生の原稿は順調に遅れています

 

 

2017/07/17読了。

メディアワークス文庫であやかしもののシリーズを書かれている峰守ひろかず先生の初富士見L文庫作品。

無論、今回もがっつりあやかし、というか妖怪ものです。

作中では「物ノ気」(モノノケ)と呼ばれる方が多かったですが(妖怪になる手前の幼生という定義だった)

 

大御所の小説家に「やらかした」せいで憧れの文芸編集者をやめなければならないかと思っていた詠見だが、倒れた編集者の代理として、あるベテラン作家の担当編集者となる。

そのベテラン作家、六道先生だが、見た目はどう見ても18、19歳の青年にしか見えない。

それもその筈、実は彼は「妖怪」だった……

 

今回も男性が非人間、女性が人間のペア(「陰陽課」がそれに該当)でのあやかしものに、小説出版お仕事ものも追加された読み応えのある作品でした。

西新宿周辺に実在する伝説や伝承に、怪異や現代社会での苦労、出版業界での苦難を絡めてあって面白い展開でありました。

今回の妖怪の定義がまたいつもとは違う解釈なのも凄い。

 

あやかしものとして読んでも面白いのですが、ヒロインが編集者ということもあって、出版業界の表裏みたいなものも垣間見えたところも興味深かったですね。

編集者と作家さんの関係性や、編集者さんの本音や仕事ぶりなどなどが描かれていることもありまして。

「作家なんて妖怪か宇宙人だ」と言い切っちゃう編集長にも笑いましたし(その発想は実際の小説家さんじゃないと出てこないと思う……というか言えないと思う)

中堅出版社なのにメンツが何とも濃いところもいい。

他のメンバーを絡ませても話が広がりそうです。

 

今回は民間伝承から発生したあやかしがメインだったせいか、古くからいる大妖怪は出てこなかったように思います。

名前のある妖怪も、比較的歴史の浅い妖怪がメイン。

実は六道先生の正体もそうなのですが、個人的に驚いたのは、この先生の正体の妖怪が、歴史が浅いどころか、実は……な点(ネタバレが激しいので割愛)

で、この点が、彼が小説家という道を選んだところにも関わってくるという……練り込まれた設定で舌を巻きました。

1作目でここまでがっつり伏線を回収して、謎を明かしてくれる潔さ、素晴らしい!

焦らすパターンもありますからね。

 

どうもツンデレのようなライバル妖怪、前述通り濃い個性持ちの出版社の同僚たち。

世界観を広げられる要素がまだまだありますので、これは是非シリーズ化を希望したいところ。

まだ六道先生と詠見コンビも始まったばかりですしね。

この2人の関係性もどうなっていくのか、続き見たいです。

 

そう言えば、六道先生の原稿は確かに遅れはしたけれど、締め切りは結局守ってた気が。

何だかんだで締切に間に合わせちゃう六道先生、作家の鑑か!

化学探偵Mr.キュリー6

 

化学探偵Mr.キュリー6 (中公文庫)

化学探偵Mr.キュリー6 (中公文庫)

 

 

2017/07/11読了。

大好きな化学ミステリシリーズ6作目。

しかも、今回は初の長編!

でも冗長さを感じさせず、最後まで気になりっぱなしで読ませるのは凄いなと思いました。

 

飛び級で大学に入学し、Mr.キュリーの元へ留学に来た化学の天才児エリー。

彼女はアメリカで出会った男性を追いかけて、ある天然素材の全合成に挑むが、最終段階で失敗してしまう。

しかも、彼女が追いかける男性は行方不明になっており、全合成を挑んでいる天然素材に関する研究資料はもう手に入らない状態。

そこには、ある「裏」の事情が隠されていた。

 

いつも以上に化学色の強かった今回ですが、基本的には化学の知識がなくても読める匙加減が今回も素晴らしかったです。

大学時代に有機合成が卒論研究だったこともあって、非常に懐かしくもありました。

知ってれば知っているほど、今回のゲストキャラのエリーの天才さが分かる訳ですけれども。

驚異的なスピードかつ収率だよ。

そりゃMr.キュリーも圧倒されますよね。

 

しかも、今回の全合成に挑んでいる化合物のことを調べれば調べるほど、様々な人の思惑が絡んできて複雑怪奇な迷路に。

エリーの思い人の行方も複雑な経緯を辿りますし、流石長編、ミステリとしての謎は本当に終盤まで深まるばかりでした。

だからこそ、そこからの逆転劇は胸がすかっとするいい話でしたけど。

この爽快感は是非実際に読んでほしいところです。

 

ミステリとしても面白かったですが、今回は珍しくMr.キュリーの葛藤というか思い悩む様が見られて、いつもとは違う新鮮な面白さがありました。

本物の天才を前にして、自分は「ギフテッド」(先天的に、平均よりも、顕著に高度な知的能力を持っている人のこと。 または、先天的に、平均よりも、顕著に高度な知的能力を指す Wikipediaより)なのか、ギフテッドでないのであれば、こんな凡人が化学を続けていて意味があるのかと悩みます。

今までの彼からは考えられない悩みですね。

その悩みを解決する糸口を見つけてくれるのが舞衣であり、ライバルの氷上なところもよかったです。

舞衣の一言を受け取った時のMr.キュリーの挙動は本当に見ものです。

滅多に見れないよ、あんな光景。

Mr.キュリーは舞衣が困ると文句を言いつつ、いつも助けてくれますが、Mr.キュリーがいざ困った時は、舞衣が(無自覚ながら)助けてるんですね。

いいなあ、うらやましいなあ、こういう関係性。

これで、先生自身も少し成長したのではないでしょうか。

 

最後の最後にはエリー自身の秘密も謎解きされ(これには伏線は張られてはいたけど、びっくりしました)謎解き要素盛りだくさんな長編でした。

いや、本当に面白かったです。

喜多さんの作品はちょろちょろ読んでますけど、やっぱりこのシリーズが一番文章が活き活きしている気がします。

読んでいて、こちらもワクワクしてきますから。

いい化学ミステリだったな、次回も期待!