いこの読了本備忘録。

読んだ本の覚え書き、みたいな。キャラクター小説多め。※ネタバレにはあまり配慮できてませんのでご注意を

かぜまち美術館の謎便り

 

かぜまち美術館の謎便り (新潮文庫nex)

かぜまち美術館の謎便り (新潮文庫nex)

 

 

2017/12/25読了。

 

ある町に越してきた美術館の学芸員なパパと保育園児の女の子を中心として、この町で起きたトラブルを解決しつつ、ずっと町が抱えてきた重大な謎にも迫っていくというミステリ。
しかも謎解きは実在の有名な絵の解釈が用いられるので、美術好きにはたまらない仕様ではないでしょうか。
本自体にその絵の実物は掲載されていないので、是非検索などして実物の画像を見ながら読んだ方がいいかと思います。
(ただ個人的には好きな時代の絵じゃないんだよな、という野暮な感想は脇に置いておく)

 

個人的にはちょっと好きじゃない文章、雰囲気だったんですけど(どこがどうと言われると表現できないので説明しきらないけれど、序盤は特に挫折しそうになった)それ以上に深まっていく謎の方が気になって、ついつい読んでしまうという、自分としては何とも不思議な作品でした。

 

行方不明になった配達人の正体は。
本作の恐らく大人側のヒロインであろう先生の兄の死に関する謎。
そして、引っ越してきたパパの正体は、果たして。

 

基本的には一話完結の連作短編作りですが、一貫してある謎を引っ張るので、それの結末が気になって気になって仕方ないという。
しかも、小出しで解決していくものだから、引っ張り方が絶妙。
そして明かされる謎……クライマックスは非常にきな臭い話になっていきます。
表紙の絵から感じる印象とはかなりかけ離れた展開になります。
いやもうオチにびっくりです。

 

それに地味に気になるのは不在の「ママ」の謎。
保育園の先生の恋心とも絡んでくる話なので、こちらも気になっていたのですが……こちらのオチにもびっくりさせられます。
何というか、うん、ビターな感じです。

 

前述しましたが、表紙の絵に惹かれて読むと、途中からそのギャップに驚くかと思います。
油断せずに読んでいただきたいです。
途中からホラーじみてきますから。

この終末、ぼくらは100日だけの恋をする

 

この終末、ぼくらは100日だけの恋をする (メディアワークス文庫)

この終末、ぼくらは100日だけの恋をする (メディアワークス文庫)

 

 

2017/12/26読了。
似鳥航一さんのがっつり恋愛ものというのも読んでみたくて食いつきました。
まあ結局ただの恋愛ものに終わらなかったのですが、それはさておき。

 

ヒロインの性格が某和菓子のお嬢様を彷彿とさせました。
全く一緒では勿論ないのですが、雰囲気が似ていると言いますか、個人的には馴染み深くて「ああ、似鳥さんだな」と安心して読めました。
彼女と主人公との会話がまた楽しいんですよね。
ボケとツッコミが秀逸でテンポよく心地よい。
これもまた似鳥さん作品の良さ。

 

そんな雰囲気に安堵しきっていたら、中盤からタイトルにある「100日だけの恋をする」という展開に。
ただの恋愛ものが、一気にSFの色が強まります。
そして純愛度と「終末」感も増していきます。

 

もし自分の最期のタイミングが分かっていた場合、自分は何をしたいと思うだろう。
あるキャラはここで「恋をしたい」と願った。
しかもその相手は初恋の君だった。
ああ、この設定だけで泣けるじゃないか(単純)
しかもこのキャラ、アフターフォローまでできていた。
一人取り残されるあるキャラに対してあるメッセージを残していたのですが、それがまたもう……思い出しただけで泣けます(単純)

 

作中で起こっていた世界的事件を絡めながらの壮大なクライマックス、そこで明かされる衝撃の真実がまた似鳥さんらしい展開。
ただのSFオチで終わらせないところがニクい。

 

そして、物語冒頭と同じ場面へ戻っていきます。
物語は循環しているのかと思いきや……そこから先は読んでみてのお楽しみ。

 

やっぱり似鳥さんの作品好きだなと再確認できた恋愛ものでした。
終末感もありつつ、ちゃんとハッピーエンドで終わりますよ。
安心して思い切り泣いて、最後「そういうことかよ、畜生!」と叫んで読んで欲しい作品です。

死を見る僕と、明日死ぬ君の事件録

 

死を見る僕と、明日死ぬ君の事件録 (メディアワークス文庫)

死を見る僕と、明日死ぬ君の事件録 (メディアワークス文庫)

 

 

2017/12/27読了。
2017年最後の読了本はこちらになりました。

 

これがまたネタバレに配慮して感想を書こうと思うと非常に至難の業でして。
まあ所謂ミスリード系ではあるのですが、そこまでは予想できていても、具体的な内容に関しては正直想定していないところから球が飛んできたものだから回避不可能だったという。
この構成が非常に巧みでした。
二度読み必至という紹介文に異論は全くなかった。

 

今から思えば、伏線はあちらこちらに巡らされていました。
「彼女」の初期の戸惑い、家族構成に関する質問、ある人物からの呼ばれ方などなど、前半だけでもたくさんあります。
でも、もう本当に正直、ここまでの秘密が某キャラにあったとは……

 

本当に面白い作品なんですが、人に紹介しようと言葉を重ねると途端にネタバレも応酬になってその魅力や驚きが半減してしまうという、なかなか取り扱いが難しい作品です。
でも、本当に面白いミステリでした。

文章の雰囲気はライトノベル系ではあるのですが、ライトだと思って軽く見てると痛い目に遭います。

 

是非二度読んで、設定の巧みさにもう一度驚いて欲しいですね。
違和感のあった箇所が、どんどん納得するものに変わっていきますから。

古事記と日本書紀どうして違うのか

 

 

2018/01/05読了。
2018年最初の読了本になりました。
正月らしく(?)日本の神様の話を読んでみた感じになりました。
まあ、神様の話ばかりではないのですが。

 

タイトル通り、古事記日本書紀の違いに関して、主立ったエピソードを比較したり、成立過程などを解説したりして書かれています。
ただ、自分の読解力が足りないのか、ちょっと分かりにくい気がしました。
結論が見えてこないと言いますか。
どうしても理系人間なもので「結論はっきりしろよ!」と思うのですが、いざ読み終わって古事記日本書紀の違いが分かったか、その理由はと問いかけられると答え難いという。

 

前半の神様の時代の話はまだ分かりやすいのですが、それが天皇の時代になってくると途端に分かりにくくなる。
図も多用されてはいますが、文章と図にいまいち相関がないものだから、やはり分かりにくい。
自分が阿呆なだけなのかもしれませんが、もう少し初心者にも分かりやすい工夫をしていただきたかった気はします。

 

そう言う意味では、多少は古事記日本書紀について分かっている人が読んだ方がいいかもしれません。

憧れの作家は人間じゃありませんでした2

 

憧れの作家は人間じゃありませんでした2 (角川文庫)

憧れの作家は人間じゃありませんでした2 (角川文庫)

 

 

2017/12/02読了。

吸血鬼小説家と彼の熱烈なファンな女性担当者(+人なつこい刑事)が、人ならざるものが関係する事件を解決しつつ、担当者さんが何とか小説を書いてもらおうと奮闘するシリーズ2作目。


1作目が本当に面白かったので、2作目登場本当に嬉しかったです。

前回は事件解決後に何とか短編小説が書けていたのですが、今回はなかなか小説を書いてもらえず。
先生は何故か映画を見て夜更かし(?)はするけれど、原稿が進んだ気配もなく……と思っていたら、最後の最後で以下割愛。
この構成が、巻末の短編と併せて素敵でありました。

 

事件の方は、色々な意味で泣かせる話が印象に残っています。
亡くなった人が子供のところに戻ってくる話も泣けましたし、ある妖怪の恋物語は悲恋になってしまって、こちらも泣けましたし。
この恋物語の方は、某苛つくキャラの発言もあって、女性担当編集者にとっては心にトラウマを負う話に。
このトラウマが最後のドッペルゲンガーの話に繋がってくるという。
この事件の方の構成にも舌を巻きました。
伏線の張り方が絶妙です。

 

自分は平凡で何の取り柄もないと思っている彼女の周りには、いつの間にか仲間が増えてきています。
今回登場した某キャラではないですが、羨ましく思えるほど。
今後もシリーズが続いていくのであれば、こうして仲間が増えていくことがいい未来に繋がってほしいものです。
ほら、あのラスボス的キャラをぎゃふんと言わせるためにも是非。
(今回も最高に腹立たしいキャラでした。
正論を言ってはいるのですが、言い方が逐一癇に障る)

 

担当編集者という前に先生の大ファンである彼女の前ではかっこつけたい先生。
先生の運命の相手が見つかるまで、そばにいようと思う担当者。
この2人の関係性も前回から少し変わった気がします。
個人的には先生の運命の相手が彼女なら(王道でご都合主義だが)大変嬉しいですけど。
そうじゃなくても、それはそれでおいしいですけれど。
是非、運命の相手に出会えるまで、シリーズが続いて欲しいなと願うばかりです。

 

先に書きましたが、巻末には先生の使い魔視点の馴れ初め話も。
今回は彼女の出番が少ないように思えたので、これはそう言う意味でもいい補完話でした。
彼女が如何にして彼の使い魔になったのか。
そして、本編のある場面でどうして彼女がああいう行動を取ったのか。
本編は女性担当者視点なので、違う視点から本編を見られて新鮮でした。
今回も最後まで楽しんで欲しい作品です。

奈良まちはじまり朝ごはん

 

奈良まちはじまり朝ごはん (スターツ出版文庫)

奈良まちはじまり朝ごはん (スターツ出版文庫)

 

 

2017/11/28読了。

出社初日に会社が倒産し無職になってしまった女性が、奈良町で日替わりの「朝ごはん」のみを提供する飲食店の店主と出会い、それが縁でその飲食店で働くことに。
そんな「朝ごはん」屋さんでの出来事を綴った物語。

 

一日の最初に食べる食事は総じて「朝ごはん」であり、温かい物を食べるべきという考え方は素敵だったし、サブキャラクターも素敵だったし(特に常連のお客様の園子ちゃんとか、オネエな和尚の和豆さんとか)出てくる料理のレシピもあったりと魅力的な部分はあったのですが、如何せん問題点の方が目に付きました。

 

まず、主人公が個人的にどうしても好きになれなかった点。
人の悩みや問題に無遠慮にずかずか入り込んできて、大抵失敗というか引っかき回したり余計ややこしくしたりと、主人公にあるまじき行動を取ることが多く、正直読んでいてイライラしました。
それで反省してくれるならよかったのですが、この人は懲りません。
本人もそういう点が問題だと自覚しているのに、喉元過ぎれば何とやら、次の話でまた同じように首を突っ込み同じような失敗を繰り返すという。
全く成長していない……

 

そう、この主人公、作中であまり成長しません。
読み手側を苛つかせるだけ苛つかせて終わるという。
感情移入できる部分がなくて非常に困りました。

 

そして、もう一つの難点は、「幽霊」の扱いについて。
この物語、途中で唐突に「幽霊」が登場します。
折角、飲食店を舞台にご飯で癒される話となっていくのかと思いきや、いきなりファンタジー要素がぶっこまれるという。
異色過ぎて、呆気にとられました。

 

これは別作品でも言ったことがあるのですが、オカルトネタ自体を毛嫌いしてのツッコミではないのです。
幽霊などのオカルト、ファンタジー要素を出すのであれば、世界観統一のために話の最初から登場させるべきで、例えばこの作品なら猫のナムを喋らせる、猫又にするなどの統一性を見せるべきでした。
日常ほっこり話と思いきや、途中でファンタジーを見せられても、違和感しかないのです。

 

最後の話ではなんと火の玉まで登場し、しかも「お盆の奈良にはこういうことも起きるさ」と某キャラに言わせる始末。
何と雑な説得。
それに「幽霊はいない」なんて言ってる人がばっちり幽霊見えてたり。

 

とにかく、ツッコミを入れ出すときりがないくらい、設定がガバガバと言いますか、世界観の統一がされていません。
主人公の性格と併せて、申し訳ないですけど読んでいてイライラしました。

 

折角素敵な題材なのに、勿体ないなあ。
設定をきっちり練ってから書けば、化けたでしょうに。
本当に残念でした。

小説 劇場版 はいからさんが通る 前編 〜紅緒、花の17歳〜

 

 

2017/11/26読了。

 

劇場版「はいからさんが通る」前編を見て、久し振りに「はいからさんが通る」原作を読んだのですが、原作と劇場版では特に少尉=忍さんの性格が違うなと思いまして。

 

原作の少尉は、紅緒さんに最初はあまり好印象を持っていないんですよね。
そして自分が女性に人気があるというのを十分自覚していて、その点に自信すら持っている。
自信を持っているという点では大人であり、ちょっと鼻につく部分でもあり、自分は女性にもてるんだぜイエイ!となっている辺りは子供っぽくもある。
そんな彼が、最初はあまり好印象を持っていなかった紅緒に今まで出会ってきた女性とは違うところ、自分のテクニックが通じないところに次第に興味を持っていき惹かれていく……という感じだと自分は思っています。

 

一方、劇場版の少尉はというと、尺の都合もあるのでしょうが、初手から割と紅緒さんに好意的であり、王子様然としています。
嫌味な部分がないんですよね。
原作のラスト頃の少尉の雰囲気に近い気がします。
多分、こちらの方が現代の女子の好みに合っているのでしょう。

 

で、自分は原作の少尉(嫌味なところもある、子供っぽいところもある少尉)も大好きなんですけど、劇場版見た後だと、どうもあの王子然している少尉も好きだなと思いまして。

 

要は何が言いたいかと言いますと。

 

劇場版の少尉をもう一度しっかり味わいたくなった。

 

ということでノベライズを手に取った次第。
前置きが長い。

 

さて、こちらのノベライズ。
劇場版を本当にそのままノベライズ化してあります。
なので、特に小説のオリジナル要素というのはありません。

 

ただそれ故に弊害もあります。
後半はさておき、前半は台詞と台詞の間を説明的文章で繋いだだけという印象が強く、ノベライズとしてはいいかもしれませんが、小説として読むにしては少々お粗末。
丁寧な心理描写、丁寧な情景描写はあまりありません。
「小説」ではないんですよ。
読み物ならいい、粗筋をただ淡々となぞるだけが目的ならいい。
ただ「小説」として読んだ場合は、幼稚ですらある。
正直、そんな印象でした。

 

ただ少尉の異動が決まった辺りからは、その文章がある程度化けました。
ノベライズから小説寄りになったと言いますか。
特に少尉の心理描写が丁寧になりました。
何故最初からそうやらない! と思うほどに。
多分、書き手が少尉のこと好きなんだろうなと思います。
ノリノリで書いているのが手に取るように分かる。
(で、前半は乗り気でなく、作業として書いた印象が強い)

 

と、ノベライズとして難ありな文章ではありますが、劇場版の内容から逸脱していないので、純粋に劇場版を復習したいというだけなら十分だと思います。
劇場版のカットを使用した挿し絵も用意されています。
気に入った場面があるなら、読んでみてもいいかもしれません。

 

ちなみに、劇場版そのものの話の流れや少尉以外の原作との違いなどについては、この場では割愛します。
個人的には、色々原作のエピソードを合体させて、より女性がうっとりできる話にはなったなとは思っています。
特に酔った紅緒さんを背負って帰るあのシーンとかね、たまらなかったなあ。
後は……ぐふふ、気になる方は劇場へどうぞ。