いこの読了本備忘録。

読んだ本の覚え書き、みたいな。キャラクター小説多め。※ネタバレにはあまり配慮できてませんのでご注意を

パティスリー幸福堂書店はじめました

 

パティスリー幸福堂書店はじめました (双葉文庫)

パティスリー幸福堂書店はじめました (双葉文庫)

 

 

2018/2/3読了。

昔お世話になっていた個人書店が一つまた一つと消えていくのを見てきて辛いと感じている中、こうして生き残りを賭けて個人書店のリニューアル、ケーキも本も楽しめるお店というのは地獄で救いの糸を見つけた気分でした。
是非とも頑張って欲しいなと思ってしまうのは肩入れしすぎか。

 

書店の経営がうまくいかない主人公の女性と、味はいいのに接客に不向きな態度にいちごのショートケーキが作れないという致命的な欠点をもつパティシエ(と彼を支える謎多き「兄さん」)
訳ありたちが集まっての心機一転、果たして書店+ケーキ屋の経営はうまくいくのか。

 

来るお客さんがなかなかに複雑な問題を抱えていて、かつ総じて変わり者というか一方向に突き抜けている感じで非常に驚かされました。
個性が強いというか癖が強いというか。
こんな人たちがいるだなんて、世間は案外狭い。
取り敢えず、姑さんには一番腹が立ちました。
食べ物を粗末にする息子馬鹿な姑さんにはいつか天罰が下らんかなと切に願うほど。

 

主人公たちも問題を抱えてはいましたが(特にパティシエさんは致命的)そこを素敵な提案で乗り越えていけたところはよかったです。
まさか作中で改善されるとは思わなかったので。
今後は名物になっていって欲しいな、いちごのショートケーキ。

 

何より一番の謎だったのは年下の筈なのに「兄さん」という彼の存在。
改装代をぽんっと出せるところ、芸達者なところ、何者だよと思っていたところに最後の最後で暴露。
伏線はあった筈なのに気付けず歯噛みする羽目になりました。
そういうことかよという。
まあ全部が全部分かった訳ではないのですが(例えばパティシエさんとの出会いの詳細など)最後にすっきりできてよかったです。

 

とにかく、前述したとは思いますが、この店舗が無事に続いていくことを願うばかりです。
今も頑張っている個人書店さんのためにも。
自分も頑張って本買いに行くぞ!
近所の個人書店は全滅したけれども。

下町俳句お弁当処芭蕉庵のおもてなし

 

 

2018/02/05読了。

テレビ番組の影響もあって、俳句人気が強いですよね(かくいう我が家も皆見ている)
そして、キャラ小説界では弁当屋ものも受けがいい。
ならば、この2つがフュージョンした作品はきっと面白いに違いないと思って手に取った次第。
(決して安易な考えとツッコミを入れてはいけない、誰に対してかも言ってはいけない

 

松尾芭蕉を愛する青年が営むお弁当屋さんでは、俳句好きな常連たちと松尾芭蕉を巡るツアーが定期的に開催される。
そのツアーにたまたま参加することになってしまった主人公の女性。
そこからお弁当と俳句の魅力に引き込まれていく……という感じの物語。

 

弁当と俳句が共に人の心に寄り添うものという解釈が冒頭から登場するのですが、この考え方が本当に素敵でした。
出てくるお弁当もどれもおいしそうで、匂いまでこちらに伝わってくる表現もよかったです。
ある程度は作り方を解説してくださっているので(と言っても特別なことはしてないけれども)自分の料理に活かせるところもありそう。

 

俳句も初心者だった主人公が作中でじわじわいい感じに成長しているところが自分としては見えたなと思います。
最後の俳句が特に好きだなあ。

 

ただ話の流れは先行している他の作品でも見られた展開だったので、その点は惜しかったなと思います。
弁当屋の危機→客が弁当屋のためにお弁当を作るというこの流れ。
弁当屋さんではあるあるな流れなのかもしれませんが、もう少し違った展開も読みたかった気がします。
完成にここまで時間かかるとは聞いてなかったけれども。

 

お弁当屋さんこと通称「芭蕉さん」(こんな呼び名なのに俳句下手という)と主人公のほんのりとした恋愛も楽しめるし、舞台となった町も素敵、松尾芭蕉ゆかりの地も勉強できるので、現地に行って読んだり、画像検索しながら読むとより楽しめるのではないでしょうか。
こんなお弁当屋さんもいいなと思える作品でした。
俳句は苦手だからなあ、若干敷居は高いかもだが。

死香探偵 尊き死たちは気高く香る

 

死香探偵 - 尊き死たちは気高く香る (中公文庫)

死香探偵 - 尊き死たちは気高く香る (中公文庫)

 

 

2018/02/10読了。

これまた変態というか、Mr.キュリーとは違う方向性の変人化学者でありました。
化学に対して純粋というか真摯ではあるのだけれど、おぼっちゃんということもあって、少々考え方がずれている。
しかも、自分のその発言の意味をよく考えずに口に出しているところもあるので、下手すると主人公と男色に見える場面も。
イケメンと女顔の小さな主人公(※男性)変なお嬢さんたちが騒ぐぞ。

 

死臭が(作り物めいた)食べ物の匂いに感じられ、その死臭を嗅ぎ続けると代償としてその匂いのする食べ物の匂いが不快な臭いに変わるという難儀な体質もちの青年が主人公のミステリ。
この代償が結構エグい。


例えば、ある死臭は鰹だしの匂いがしていたけれど、例の変人化学者につき合って殺人事件に関わってその死臭を嗅ぎ続けた結果、鰹だしの匂いがする和食全般が(臭いが酷くて)食べられなくなってしまったという。
彼、別件でご飯の匂いもダメになったから、何食べて生きればいいんだという状態。
自分だったら耐えられない。


それでも彼は体質改善という建前(本当に建前)で協力して欲しいという変人化学者の研究につき合っていきます。
彼、いい子だよな。


それにしても、この発想、どこから思いついたんでしょう、喜多先生。
まあ確かに化学やってる人たちは、匂いでどの薬品か当てるなんてことできるようになると言いますが(自分も多少できる)

 

殺人事件のパターンが自殺か他殺か分からないもの、連続殺人事件、2つの殺人事件が交錯するものなど多種多様なものがあり、やや失敗する流れがあるのもあって面白いです。
化学は万能ではない、完璧な人間はいないと見せつけるところが、ただのご都合主義で終わってなくていいです。

 

ただその割りに、警察がやけに協力的すぎるところに違和感がありました。
4話目だったかに、やっとこの匂いによる殺人事件調査に否定的、非協力的な刑事さん出てきて、逆に安心してしまったくらい。
先生のバックがでかいというのもあるのですが、警察さん、民間人な先生にそんな協力的でいいのかしら。
できれば、協力的である刑事さんとの馴れ初め話も読めたらなと思います。
初対面は是非否定的であって欲しい。

 

バリエーション豊富な殺人事件の中、個人的には最後の連続殺人事件が面白かったですね。
犯人が使ったトリック(これが殺人を行うトリックではなく、ターゲットを決めるトリックというところも面白い)も多少化学をかじっていれば先読みできる内容だったので、自分の考えが当たって嬉しかったというのもあって。
取り敢えず、ネタバレになるので詳しくは言えませんが、ゴミのポイ捨て止めましょうと強く言いたい。

 

この化学ミステリも本当に面白かったので、是非シリーズ化を望みたいけれど、そうなると主人公の彼の食べられる物も減っていくので心苦しい。
体質を完全に治すとまではいかないにしても(そもそも先生が能力喪失を認めてくれないから無理)せめて代償が軽減されることを祈るばかりです。
どうにかならないものか。
先生には頑張って欲しいです。
多分言わなくても嬉々として研究してくれそうではあるけれども。

かぜまち美術館の謎便り

 

かぜまち美術館の謎便り (新潮文庫nex)

かぜまち美術館の謎便り (新潮文庫nex)

 

 

2017/12/25読了。

 

ある町に越してきた美術館の学芸員なパパと保育園児の女の子を中心として、この町で起きたトラブルを解決しつつ、ずっと町が抱えてきた重大な謎にも迫っていくというミステリ。
しかも謎解きは実在の有名な絵の解釈が用いられるので、美術好きにはたまらない仕様ではないでしょうか。
本自体にその絵の実物は掲載されていないので、是非検索などして実物の画像を見ながら読んだ方がいいかと思います。
(ただ個人的には好きな時代の絵じゃないんだよな、という野暮な感想は脇に置いておく)

 

個人的にはちょっと好きじゃない文章、雰囲気だったんですけど(どこがどうと言われると表現できないので説明しきらないけれど、序盤は特に挫折しそうになった)それ以上に深まっていく謎の方が気になって、ついつい読んでしまうという、自分としては何とも不思議な作品でした。

 

行方不明になった配達人の正体は。
本作の恐らく大人側のヒロインであろう先生の兄の死に関する謎。
そして、引っ越してきたパパの正体は、果たして。

 

基本的には一話完結の連作短編作りですが、一貫してある謎を引っ張るので、それの結末が気になって気になって仕方ないという。
しかも、小出しで解決していくものだから、引っ張り方が絶妙。
そして明かされる謎……クライマックスは非常にきな臭い話になっていきます。
表紙の絵から感じる印象とはかなりかけ離れた展開になります。
いやもうオチにびっくりです。

 

それに地味に気になるのは不在の「ママ」の謎。
保育園の先生の恋心とも絡んでくる話なので、こちらも気になっていたのですが……こちらのオチにもびっくりさせられます。
何というか、うん、ビターな感じです。

 

前述しましたが、表紙の絵に惹かれて読むと、途中からそのギャップに驚くかと思います。
油断せずに読んでいただきたいです。
途中からホラーじみてきますから。

この終末、ぼくらは100日だけの恋をする

 

この終末、ぼくらは100日だけの恋をする (メディアワークス文庫)

この終末、ぼくらは100日だけの恋をする (メディアワークス文庫)

 

 

2017/12/26読了。
似鳥航一さんのがっつり恋愛ものというのも読んでみたくて食いつきました。
まあ結局ただの恋愛ものに終わらなかったのですが、それはさておき。

 

ヒロインの性格が某和菓子のお嬢様を彷彿とさせました。
全く一緒では勿論ないのですが、雰囲気が似ていると言いますか、個人的には馴染み深くて「ああ、似鳥さんだな」と安心して読めました。
彼女と主人公との会話がまた楽しいんですよね。
ボケとツッコミが秀逸でテンポよく心地よい。
これもまた似鳥さん作品の良さ。

 

そんな雰囲気に安堵しきっていたら、中盤からタイトルにある「100日だけの恋をする」という展開に。
ただの恋愛ものが、一気にSFの色が強まります。
そして純愛度と「終末」感も増していきます。

 

もし自分の最期のタイミングが分かっていた場合、自分は何をしたいと思うだろう。
あるキャラはここで「恋をしたい」と願った。
しかもその相手は初恋の君だった。
ああ、この設定だけで泣けるじゃないか(単純)
しかもこのキャラ、アフターフォローまでできていた。
一人取り残されるあるキャラに対してあるメッセージを残していたのですが、それがまたもう……思い出しただけで泣けます(単純)

 

作中で起こっていた世界的事件を絡めながらの壮大なクライマックス、そこで明かされる衝撃の真実がまた似鳥さんらしい展開。
ただのSFオチで終わらせないところがニクい。

 

そして、物語冒頭と同じ場面へ戻っていきます。
物語は循環しているのかと思いきや……そこから先は読んでみてのお楽しみ。

 

やっぱり似鳥さんの作品好きだなと再確認できた恋愛ものでした。
終末感もありつつ、ちゃんとハッピーエンドで終わりますよ。
安心して思い切り泣いて、最後「そういうことかよ、畜生!」と叫んで読んで欲しい作品です。

死を見る僕と、明日死ぬ君の事件録

 

死を見る僕と、明日死ぬ君の事件録 (メディアワークス文庫)

死を見る僕と、明日死ぬ君の事件録 (メディアワークス文庫)

 

 

2017/12/27読了。
2017年最後の読了本はこちらになりました。

 

これがまたネタバレに配慮して感想を書こうと思うと非常に至難の業でして。
まあ所謂ミスリード系ではあるのですが、そこまでは予想できていても、具体的な内容に関しては正直想定していないところから球が飛んできたものだから回避不可能だったという。
この構成が非常に巧みでした。
二度読み必至という紹介文に異論は全くなかった。

 

今から思えば、伏線はあちらこちらに巡らされていました。
「彼女」の初期の戸惑い、家族構成に関する質問、ある人物からの呼ばれ方などなど、前半だけでもたくさんあります。
でも、もう本当に正直、ここまでの秘密が某キャラにあったとは……

 

本当に面白い作品なんですが、人に紹介しようと言葉を重ねると途端にネタバレも応酬になってその魅力や驚きが半減してしまうという、なかなか取り扱いが難しい作品です。
でも、本当に面白いミステリでした。

文章の雰囲気はライトノベル系ではあるのですが、ライトだと思って軽く見てると痛い目に遭います。

 

是非二度読んで、設定の巧みさにもう一度驚いて欲しいですね。
違和感のあった箇所が、どんどん納得するものに変わっていきますから。

古事記と日本書紀どうして違うのか

 

 

2018/01/05読了。
2018年最初の読了本になりました。
正月らしく(?)日本の神様の話を読んでみた感じになりました。
まあ、神様の話ばかりではないのですが。

 

タイトル通り、古事記日本書紀の違いに関して、主立ったエピソードを比較したり、成立過程などを解説したりして書かれています。
ただ、自分の読解力が足りないのか、ちょっと分かりにくい気がしました。
結論が見えてこないと言いますか。
どうしても理系人間なもので「結論はっきりしろよ!」と思うのですが、いざ読み終わって古事記日本書紀の違いが分かったか、その理由はと問いかけられると答え難いという。

 

前半の神様の時代の話はまだ分かりやすいのですが、それが天皇の時代になってくると途端に分かりにくくなる。
図も多用されてはいますが、文章と図にいまいち相関がないものだから、やはり分かりにくい。
自分が阿呆なだけなのかもしれませんが、もう少し初心者にも分かりやすい工夫をしていただきたかった気はします。

 

そう言う意味では、多少は古事記日本書紀について分かっている人が読んだ方がいいかもしれません。